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小林正英のイラスト誕生秘話 Part 1 by じゅんじゅん 

毎回ナイスなイラストで水と油のチラシを飾っている小林正英ですが、彼がいかにして絵を描くようになったかを、御紹介しよう。

まずはマサヒデの黎明期から……。

私、じゅんじゅんとマサヒデとは大学の同級生で、一緒のサークルに入っていた。そのサークルは「全米トップ40」と言う名前で、洋楽(ナツカシイひびき!)を「聴く」というなんともケッタイな目的のサークルだった。

そんなのひとりで聴けばいいじゃん、 と思われル人もいるであろうが、そのサークルには見事に「音楽は好きだけど楽器は弾けないし、友達もいないんだよね、音楽は好きだけど……」といったテイストの奴らが集まっていたのである。

はっきしいって、オタクである。ごめんなさい。僕もそのひとりです。

活動内容といえば、サクッと授業をさぼって渋谷のレコード屋をみんなで順番に回り、濁った眼で棚をあさったり、学食で「俺プリンスだったらカラダあげてもいいスよ。」などど、基本的に非建設的なトークをやり合ったりしていた。

そんな中で唯一活動らしい活動といえば、週に2回、大学の教室で順番に何人かが自分で選曲したテープを持ち寄りみんなの前で軽いトークとともにそのテープを聴かすというその名も「DJタイム」という今考えるとサブい、というよりイタい企画を行っていたのだった。

その「DJタイム」の時間のときにはみんなに紙が配られ、その日の「DJ」に対するコメントを書き込んだり、選曲への点数をつけたりといったことをしていた。

ある日の「DJタイム」のときに僕とマサヒデは隣に座っていつものように配られた紙を前に、ぐだぐだと下らないことを喋っていた。もちろんDJなどは聴いていない。話題はいつしかジーンズのことになり、これ又ジーンズにうるさいマサヒデはウダウダとウンチクを垂れ出した。

「あのアタリの具合をバッチシ出スにはさあ、、ココントコをぬうワケよ。」

嬉しそうにジーンズの裾をめくると、わきの耳のところをご丁寧にまつり縫いしてある。

「……オマエ自分でやったの?」

「うん。片方の足で2本のレールを縫わなきゃいけないじゃん、全部で4本縫ったんだよね。」

と、ウレしそうにしゃべっている。なんか聞かなきゃよかった……。

「……あのさあ、あの古着とかでよくあるヨレって……どうなってるかわかる?」

「……しらねえ……。。」

あれはさあ、、といってマサヒデは紙にイラストをかきだした。

「?……なにそれ……。」

ヤツはジーンズの状態をイラストで説明しようとしたのだが、グチャグチャのそれはどう見ても、ジーンズには見えなかった。しかしヤツはかまわずディティールを足してゆく。

「ココンところが洗うとこんなふうになってくるんだよねえ。」

もはや説明を聴きながらでもそれをジーンズだとはとても思えない、というある意味すごい状態のイラストであり、「ココンところ」がいったい本来のジーンズのどこいらへんをサシているのか全くケントウがつかない。

「……お前なに描いてんだよ……そのキタネエ象形文字みてえなのはなんだよ。」

「ん?ほら、こうなっているワケよ。」

と、もはや半笑いでそのグチャグチャを眺めている。マサヒデの目は多分スバラしいジーンズを見ていることだろう。本人は幸せかもしれない。しかしオレはマサヒデに現実を伝えなければと思い、辛かったが彼に告げた。

「コバヤシちゃん、どうやらキミには絵心がないようだね。アンタは今後文字以外のものをかいちゃいけんよ。まわりが混乱するケン!このヘタクソがあ!」

ヤツは「そおかあ?」と全然コタエた様子もなく

「ジュンさあ、帰りに桂花寄ってかない?」(桂花=トンコツラーメンの店)

といつもの調子でオレのアドバイスをすり抜けた。

 皆さん聞いてください。マサヒデは全然絵がかけないヤツだったんです!!!(続く。)